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ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地

スタッフが映画館で観て、おすすめしたい映画だけ紹介するページです


シャンタル・アケルマン映画祭がヒューマントラストシネマで開催中です。

今回の映画祭では『ジャンヌ・ディエルマン』ほか『私、あなた、彼、彼女』、『アンナの出会い』、『囚われの女』、『オルメイヤーの阿房宮』の5作品がデジタルリマスター版で日本劇場初公開。

 

『ジャンヌ・ディエルマン』は、シングルマザーの主婦が、お風呂を洗ったり、服をたたんだり、息子の靴を磨いたりする日常ルーティンが長々と描かれます。

奥行きのない構図やカツカツとヒールを鳴らし廊下を歩く後ろ姿がどこか小津安二郎の画を思わせたり、グリーンが基調のキッチンに置かれた赤いロゴの牛乳瓶、寝室の壁のアクアブルーなど絵画的な色づかいが観ていて楽しい。

 

ルーティンは次第に綻びをみせて、物語は悲劇へと進みます。

198分もあって正直なところ途中で眠くなりもしましたが、見終わった後で印象的なシーンがたくさん残っていて、観てしばらくしてからも、ふとこの映画を何度も思い出し、じわじわと面白かったと思えてくる映画でした。

アケルマンのほかの映画も観たくなり、何度もヒュートラに行くことになりましたが、そのお話はまた後ほど。


シャンタル・アケルマンは1950年ベルギー生まれ、ゴダールの『気狂いピエロ』を観たことをきっかけに映画監督を志しました。ガス・ヴァン・サントやトッド・ヘインズ、ミヒャエル・ハネケらは、最も強く影響を受けた映画作家の一人としてアケルマンの名前を挙げています。25歳の時に発表した、主婦の三日間の日常を淡々と描いた『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』で映画界に革命を起こし、ニューヨーク・タイムス紙には公開時「映画史上最も女性的な傑作」と高く評価されました。